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サクリファイス(著:近藤史恵)

久しぶりの読書感想文エントリ。今回はメモ的なものです。

サクリファイス (新潮文庫)
近藤 史恵
新潮社
売り上げランキング: 4670

職場近所の書店で新書の時代から目を付けていたのだけれど、そもそも新書だと持ち運べないし、サラリーマンのお小遣いでは厳しいので文庫になったのを知って購入。以下に出版社の内容紹介を転載しておきます。

ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。

勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。


このサクリファイスは自転車のロードレースを舞台とした物語です。私のような自転車競技に興味を持ってるけどそれほど知識はないという方、ちょっとしたスポーツ小説が好きな方、できれば人間関係の観察が好きな方にお勧めしておきます。ボリュームはそれほど無いのでじっくりよんで3時間ぐらいでした(ちなみに私は比較的速読らしいです)。


上記のamazonアフィのリンクをたどれば先人達が様々な内容を取り上げたレビューを書いていますが、ここでは読後に襲われた後味の悪さと登場人物の描写について書いておきます。


まず、この小説では自転車競技が逃れられない「怪我」と「死」、そして一時この競技で問題となった「ドーピング」をミステリーの要素として取り扱います。

競技に向かい合う人の弱さやエゴが積み重なっていった時、悲劇が起きる。バイクと違い肉体がほとんどむき出しの状態で走る自転車競技は、一瞬の操作ミスが自らだけでなく周りの人間を巻き込み、時には命すら危険に晒してしまいます。そのため自制を強く求められる競技です。しかし勝利への欲望はそれと矛盾する存在でもあるので、選手は二律背反を抱える事になります。それを自らのルールで律するのですが、これが時に競技そのもののルールに抵触します。その時人の取る行動は、と考えると登場人物達の取る行動がより楽しめると思います。

但しその結果は読後感にかなり重い印象を与えるので、精神状態が良い時に読むことを強くお奨めします。


ちょっと気になったのは人物描写。特に過去の恋人は重要な立ち回りを演じるのですが、視点がほとんど主人公からのものなので、彼女の内面描写はあっさりしたものになっています。個人的にはここがもう少し深く掘り下げられるとしっくり来たのですが、全体のバランスを考えるとこんなものかな、とも思います。


同時進行で図書館戦争シリーズも読んでいるのですが、ボリュームが圧倒的に違うとはいえこの小説が460円というのはバーゲンプライスだと思います(あちらは文庫版でも一冊700円ぐらいする)。通勤時や休日のちょっとした時間のお供としてお奨めの一冊です。


ただし読後感は重いので、それだけは注意を。


今日はそんな感じです。