pc4beginnerの日記 はてなブログ版

はてなダイアリーで書いていたブログの移行です。

メトロの社長は筆頭株主の利益をきちんと考えてくれるいい人だ

※当エントリは当事者の片方の言い分を多く採用していますが、それはもう片方の情報開示が足りないから、と前置きしておきます。

見出しの付け方が悪いだけ、と信じつつ気になったのでエントリ。当エントリのタイトルは保身丸出し根性に喝采しつつつけてみました。


以下、東京メトロの新社長、奥義光さんの就任会見ニュースより。

都営地下鉄との統合は困難」 東京メトロ新社長が認識(SankeiBIZ 2011.6.29 17:38)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110629/bsd1106291812009-n1.htm

懸案の株式上場については、「株主と相談し、市場の状況を見ながらいつでも上場できる体制を維持していく」と意欲を示した。

「安全・安定輸送の確保と、快適な輸送サービスの提供を行って首都機能を強く支えていかないといく」と抱負を語った。

この言葉は株主に向けての言葉と思われます。

東京地下鉄Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E9%89%84

主要株主
 財務大臣 53.42%
 東京都  46.58%

財政難の国としては早く売りたい。
東京都は都営地下鉄との一元化を推進し、利便性の向上を図る。
それぞれに配慮した言葉を並べたんだなと思ったのです。
その続きを読むまでは。

 ただ、同席した前社長の梅崎寿相談役は、「リーマン・ショックが起き、市場が悪くなった。これが震災もあっていまだに続いている。上場は株主が決める話だが、国と東京都の調整が結果的に円滑にいかなくなった」と述べた。

統合が難航しているのはリーマンショックは関係なく、一元化を優先させている東京都と金にしたい国のすりあわせがうまくいっていないだけのはずです。ちなみに東京都の主張する一元化の理由であるユーザーへの利益の還元や歴史背景等については以下のリンクに書いてあります。

温泉旅館の迷路のような地下鉄を変える(日経BP 猪瀬直樹の「眼からウロコ」2010年07月06日)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110307/262788/?ST=business

 東京メトロは、そういうコスト面の検証プロセスを経ないまま、ズルズルと民営化を進めてしまった。本来であれば、道路公団民営化と同じような検証プロセスを経なければならない。たとえば地下鉄一元化で事務部門やメンテナンス部門を統合するなどしてコストをカットしていく。ある程度贅肉を落とすという形を取りながら、利用者に還元する。

地下鉄整備の初志に戻って一元化すべきだ(日経BP 猪瀬直樹の「眼からウロコ」2010年10月26日)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20101025/249621/?ST=business

 半世紀前、東京唯一の地下鉄だった帝都高速度交通営団都営地下鉄を加えることで、国は地下鉄建設を強力に進める方向に舵を切った。その方針を示した審議会の答申は、将来の一元化を求めていた――。利用者にとって、都営地下鉄東京メトロかという区別に意味はない。利用者の利便性向上のために地下鉄一元化を進めることは、地下鉄整備の初志に立ち返ることでもある。

しかし東京メトロはこれに反対し続けています。特に問題にしているのが借金。

都営地下鉄との経営統合について、奥社長は「現状では困難」との認識を表明。梅崎相談役も、「公営企業という組織形態をどうするかということと、4000億円以上の累積欠損という2つの課題を解決しないとなかなか実現しない。時間がかかる」と述べた。

これは過去記事でもSankeiBIZは取り上げていました。ここでは東京メトロではなく、黒幕の国が反対してるとはっきり書いています。で、東京都は借金を押しつけたいだけなのだと。


都営・メトロの統合先送り 都営の1兆円以上の長期負債ネック(SankeiBIZ 2011.2.4 05:00)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110204/bsd1102040755007-n1.htm

経営統合への最大の障壁は、1兆円以上の都営地下鉄の長期負債。経営統合すれば「東京メトロの価値が毀損(きそん)される」(国交省)ため、国側が難色を示してきた。
 都側には、経営統合東京メトロの収益を都営地下鉄の借金返済に充てられるとの思惑も見え隠れする。


この借金押しつけ説には副都知事からの明確な反論があります。


都営地下鉄の健全性を財務データで示す(日経BP 猪瀬直樹の「眼からウロコ」2010年11月24日)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20101124/252558/?ST=business

都営地下鉄は経常的に黒字転換を達成し、今後は大規模な新規投資も予定されていないので、引き続き着実に債務を償還できる体力を備えている。償還ペースを速めて、毎年400億円以上償還できる体力もある。

つまりお金に困っていない、と。
ちなみにお金に困っているのは国の方です。だからこんな風に考えます。

国側の試算は、メトロ株を今すぐ上場することを前提にしたものだ。

政治家と財務省は膨れあがった国の借金を今すぐにでも圧縮したい。そのためにはカネになりそうなものはとっとと売り払いたいわけです。しかし黒字化した会社が借金を圧縮していけば、価値が上がります。しかも商売敵が殆どいない商売ですから、リスクも非常に低い。こんな感じで。

都営地下鉄は1300億円の運賃収入が確実に入ってくる。先ほど示したように、今後5年10年で都営地下鉄企業価値は急速に高まることがわかっている。

しかも副都知事は公共施設なので、消費者に利益を還元するよう主張しています。しかもこんな風に具体的に提示してくれています。


地下鉄一元化で企業は200億円の経費節減(日経BP 猪瀬直樹の「眼からウロコ」2010年12月07日)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20101206/253822/?ST=business

都営地下鉄東京メトロを乗り継いだ際に発生する二重払いを解消して、運賃を通算距離に応じたものに共通化する。現状では、都営地下鉄東京メトロを乗り継ぐと、「二重改札」になっていて、利用者は初乗り運賃を二重に支払っている。
 この二重払いによる負担を軽減するために、いまでも乗り継ぎ割引が実施されているが、それでも割高であることに違いはない。地下鉄一元化を実現すれば、運賃の共通化や二重改札の廃止などにより、利用者負担を軽減して、利便性を向上することができる。

東京メトロに比べて割高になっている都営地下鉄の運賃体系を見直す。現在、東京メトロ都営地下鉄の運賃体系は別々になっている。東京メトロの方が初乗り運賃が安く、乗車区間に応じた運賃上昇カーブも緩やかである。
 東京メトロの初乗り運賃が160円であるのに対して、都営地下鉄の初乗り運賃は170円だ。運賃上昇カーブにも差があるため、たとえば28キロ圏では、東京メトロの運賃は300円、都営地下鉄の運賃は410円となる。初乗り運賃では10円の差だったものが、28キロを超えると90円の差に開く。

後者は減収に直結しますが、公共インフラとしてもっと広い視点からのメリットをあげています。それは景気対策

減収分460億円の4割は約200億円だ。通勤定期代についてユーザー企業は約200億円を節減できることになる。残り260億円は、定期を持たない自営業者、非正規雇用など交通費が自己負担の人たちの負担軽減になる。
 通勤定期代値下げによる経費節減は、減税に近い効果が期待できる。民主党政権法人税の5%引き下げをやると言いながら、財源が確保できないことから話が進んでいない。公共料金に近い性質を持つ地下鉄の通勤定期代を値下げすることで、減税に匹敵する効果を生み、企業活動を後押しすることができる。

これはインフラという公共事業だからこそできる技です。1300億という経常利益を確保していますから、この減収も吸収できます。借金の償還スピードは単純計算では落ちますが、利便性が上がれば利用者が増え、売上げを伸ばす可能性が有ります(試算が必要ですが)。


最後に、一元化のメリットの極めつけがこれ。

運賃共通化は通勤定期代値下げだけでなく、サラリーマンの通勤地獄緩和にもつながる。企業は通勤定期代をなるべく安くしようとするから、最安ルートの定期を使うようサラリーマンは強いられる。最短ルートではなく、最安だが遠回りのルートを強いられたサラリーマンは、通勤に余計な時間がかかるだけでない。混雑率は最大200%を超え、新聞はおろか、雑誌も読めない。
 経営統合による一元化が実現すれば、運賃が安くなると同時に所要時間が短くなるケースが増える。地下鉄に乗っている人の総乗車時間も減り距離も短くなる。混雑率は低下するはずだ。

運賃を安くするために、会社に遠回りのルートを強要されるケースは多々あります。
それが無い場合には企業が痛みを受け容れているわけです。
これが解消されることは確かにメリットは大きいような気がします。


これについても具体例を挙げています。

たとえば、メトロ日比谷線広尾駅から、メトロ千代田線、メトロ半蔵門線、メトロ銀座線が乗り入れる表参道駅までのケースを見てみよう。メトロのみを利用した場合、運賃は190円である。霞ケ関駅でメトロ千代田線に乗り換え、所要時間は20分となる。
 一方、都営地下鉄を乗り継げば、所要時間は短くなる。六本木駅都営大江戸線に乗り換え、青山一丁目駅でメトロ半蔵門線に乗り換えると、所要時間は17分となる。しかし、運賃は420円と高額だ。そのため、現在では多くの人がわざわざ遠回りをしてメトロのみを利用している。
 地下鉄一元化によって運賃が共通化されれば、広尾駅から表参道駅までは、都営大江戸線を経由する最短17分のルートで、運賃は160円まで安くなる。

さて、カネカネ言ってる東京メトロ側ですが、実は儲けを消費者に還元していない節があります。


株主総会出席者2名にホテル会議場代1800万円かけたメトロの放漫経営。(猪瀬直樹Blog 2011/06/29)
http://www.inosenaoki.com/blog/2011/06/post-0abd.html


こんなの東京都に掛け合って都庁の部屋借りたら激安で済みます。ホテルは毎年の収入が減って厳しいでしょうけど、そもそも売上げを税金に頼るのはタコが自分の足をかじるような行為なので諦めてもらいましょう。他にも本業以外への投資をしたり、役員報酬が高かったりとまるでどこかの某東京電力を見ているようです。


つまり、先にそのお金を回すところがあるんじゃないの?と。


そんなわけで、今回何が言いたかったかというと産経は国民側ではなく東京メトロ寄り、もしくは国よりの記事を掲載してましたよ、というつるし上げだったりします。小さな記事でも、このような反対からの視点もわかるようにしなきゃ。記事内にリンク用意すればすむ話です。


と言うわけで、報道に求められる中立性が全く感じられない記事でした。
まとまらないのでおしまい。